顎が痛い・音がする

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顎関節症について

顎関節症とは、顎の関節の周りで何らかの要因で痛みや機能低下<顎が痛い・顎が鳴る・口が開けづらい>などが主な症状である慢性的な疾患の事で、軽傷のものから重症まで様々で、自然に治るものもあり必ず悪化していく疾患ではありません。
患部を安静にする、問題のある生活習慣を改善する、薬を服用するなどの治療で80%の人はよくなっているそうです。
しかし、重症になると症状もめまいや痛みなど全身に及び開口障害により食事の摂取が困難になったり精神的にも影響を受けるなど日常生活に支障をきたすこともあります。

【代表的な症状】主な症状が5つあります。これらの症状が一つ、もしくはいくつか重なって現れます。

①顎が痛む

顎関節および周辺の頬やこめかみの痛み。口の開け閉め、食べものを噛む時など、顎を動かした時に痛むのが特徴。

②口を大きく開けられない
<開口障害>

正常な人は指三本分入るが、指が二本程度もしくはそれ以下しか入らない。

③顎を動かすと音がする
<関節雑音>

顎を動かした時に耳の前あたりでカクカク・ジャリジャリ・ミシミシと音がする。

④噛み合わせに違和感がある

顎の関節や筋肉に問題があると顎の動きに変化が生じて噛み合わせが変わることがある。

⑤口を完全に閉じることができない

非常に稀だが、顎の関節内の構造の異常のために上下の歯列の間に隙間ができ、口が完全に閉じられなくなる場合がある。

【顎関節症のタイプ】

①筋肉の障害によって
おこるタイプ(Ⅰ型)
筋肉が何らかの原因で緊張して硬くなり血液の循環が悪くなるため生じる。頬やこめかみのあたりが痛むが、痛みは鈍く部位を特定しにくい。
また押すと強く痛むトリガーポイントというコリコリしたしこりができることがある。頭部、首、肩など離れたところに関節痛が起こる。
②関節包・靭帯の障害に
よって起こるタイプ(Ⅱ型)
顎関節の関節包みや靭帯などの繊維組織に力が加わって捻挫したような痛みを生じる関節包炎、滑膜炎などをおこし、顎を動かすと顎関節部が痛む。
③関節円板の障害によって
起こるタイプ(Ⅲ型)
関節円板が本来の位置から前にずれたままになってしまう状態のこと。この関節円板のずれは「関節円板前方転移」という。その中でも「クリック(カクカク音)」と「ロック(口が大きく開けられない)」の2種類がある。「クリック」は、口を閉じると、下顎頭から関節円板がはずれてカクンという音がし、口を開けると関節円板が本来の位置に戻る。「ロック」は、口を開けても関節円板が本来の場所に戻らず、口を大きく開けることができない。
④変形性関節症によって
起こるタイプ(Ⅳ型)
顎関節に繰り返し強い負荷がかけられたり、長い間続いたときに、下顎頭の表面が吸収されてその周りに新しい骨が作られることがある。口を開け閉めすると「ゴリゴリ」「ジャリジャリ」といった音がして、骨膜炎などの周囲の炎症を伴うと顎関節が痛む。

※顎関節症のタイプはこのように分けられていますが、実際には複数のタイプにまたがっていることが多い。

【顎関節の構造】

顎関節は左右に一つずつあり、頭の骨(側頭骨)のくぼみに、下顎の骨の突き出た部分(下顎頭)がはまりこむような構造になっています。
耳のすぐ前にあるへこみを下顎萵といい、下顎萵と下顎頭の間には関節円板というクッションの役目をする組織があり、骨同士が直接こすれあわないようになっています。
関節円板はコラーゲンという膠原繊維でできている帯状のもので、下顎萵のくぼみと下顎頭の間にはさまれるように位置し、下顎頭の先と一緒に動いて口の開閉時の圧力を吸収しスムーズに動けるようにする働きをしています。

【顎関節の働き】

口をあけるとき
下顎頭は回転し下顎萵から外れて前に滑り出す。関節円板も下顎頭の上に乗って一緒に前に移動する。
口を閉めるとき
下顎頭は後ろに移動し、下顎萵の中に収まる。関節円板も一緒に後ろに移動して元の位置に戻る。
食べ物を咀嚼するとき
下顎を左右に動かす必要があるため、左右のどちらか一方だけ下顎頭が前に滑り出し、この連続で食べ物を噛む。

※関節円板は前後の連結がゆるやかになっているため、前後に動きやすく関節円板が前方にずれたままになってしまうと、カクカクと音がしたり口が開けずらくなる症状が出てくる。

【原因】

ブラキシズム
くいしばり、歯ぎしり、歯をカチカチならすなどのことをいいます。筋肉を緊張させて顎関節に過度の負担をかけダメージを与える最も大きな原因といわれています。
ストレス
仕事、家庭、人間関係などのストレス、その他精神的な緊張は筋肉を緊張させてくいしばりや歯ぎしりを起こしたりと、ブラキシズムに影響します。
食べ物を咀嚼するとき
下顎を左右に動かす必要があるため、左右のどちらか一方だけ下顎頭が前に滑り出し、この連続で食べ物を噛む。
偏咀嚼
左右どちらか一方でばかり噛む癖のことです。片側だけに多くの負担をかけることになり、発症の原因になります。
顎や筋肉に負担をかける癖、習慣
うつぶせ寝、頬杖をつく癖、顎の下に電話をはさむ、猫背の姿勢など。
悪い噛み合わせ
偏咀嚼やブラキシズムの原因として関連しているといわれています。
その他
歯の治療などで大きく口を開けた、楽器の演奏に酷使している、顎や頭部などを強打・顎関節や靭帯を損傷したなど。
若年層に多くなっていることから、軟らかい食べ物を好む食生活により頬の筋肉が衰えていることも原因ではないかと考えられています。

治療方法

認知行動療法
ブラキシズムや癖など顎関節症の原因となる悪習癖やその誘発する背景などを自覚し取り除く。
物理療法
痛みの軽減のために患部を温めたり冷やしたりする。
スプリント療法
スプリント(マウスピース)を装着することで顎関節や筋肉への負担を軽くしてくいしばりや歯ぎしりの害を緩和する。
薬物療法
痛みにより交感神経が過剰に働くと、治す神経である副交感神経が働かなくなることを防ぐため痛みが強い場合に用いる。
また痛みにより二次的な緊張を取ることもできる。症状が軽い方なら緊張がなくなることで治ることもある。
他に、筋弛緩剤や抗不安薬、抗うつ薬を使用する場合もある。
外科療法
その他の治療で改善されない場合には行われる場合がある。関節内に強い炎症がある場合に針をさして関節内部の物質を洗い流す「関節腔洗浄療法」、関節内で関節円板と骨の癒着がある場合にそれをはがす「関節鏡手術」がある。
※関節腔洗浄療法とは
顎関節は関節包というものにつつまれています。
その関節包の中は関節腔といいます。この中は関節液という油のようなものが存在し、顎を滑らかに動かす潤滑剤の働きをしています。そこに何らかの原因により関節液の循環がうまくいかず古い関節液が老廃物として残っている場合に適応されます。注射針で関節包に生理食塩水を入れたり出したり数回行うことで関節腔を洗浄する方法です。
※関節鏡手術とは
関節鏡という手術器具を使い、顎関節をモニターを通して目で見て診断と手術を行える方法です。器具を直接顎に入れるので、少し侵害性があります。5~8日程度の入院が必要となります。

【治療はセルフケアが中心】

生活習慣病的な部分が大きいためセルフケアが中心となります。 歯ぎしりや偏咀嚼などの悪習癖やその誘発する背景などを取り除くことをしなければ根本的な治療にならないともいえます。それは症状の改善とともに再発の予防にもなります。

主なセルフケア
歯を接触させない
くいしばりをしないようにする。普段から余計な負担をかけないようにする。
(舌先を上の前歯の歯肉に当てると防ぎやすい)
無理に口を大きく開けない
大きなあくびなどは避ける。
冷湿布、温湿布
痛みの急性期には冷湿布が有効。痛みが落ちついたら温める。
(冷やしすぎると血液循環が悪くなるので注意)
よい姿勢を保つ
猫背や顎を突き出す姿勢になっていないか注意する。
同じ姿勢を長時間続けないようにし、時々ストレッチなどをする。
うつぶせ寝をしない
うつ伏せは顎や首の筋肉に負担がかかるので、できるだけ仰向けで寝る。
枕も高いものは避ける。
顎の運動をする
関節や筋肉の痛みが緩和されたら、少しずつ顎の運動を行う。
口の開閉や顎を横に動かしたり、首や肩のストレッチをする。
全身運動
ウォーキングや水泳などの全身運動をする。基礎体力の維持や全身の血行をよくする他に、気分転換やストレス解消の効果もある。
顎に負担をかけない生活
歯をくいばるスポーツ、管楽器の演奏、口を大きく開ける発声練習などに注意する。頬杖をつかない、両奥歯で噛むなど頬に負担をかけないようにする。